【専門知識なしで説明】減価償却と減損損失の違いを知ると決算ニュースがもっと楽しくなる
経済ニュースを見ていると、しばしば目にするのが決算関連の速報です。
特に、大企業が業績を上げたり逆に赤字に転落といったインパクトのある内容が、大きな見出しとともに報じられます。
その中でもよく出てくるのが
「減損損失」という謎のワード。
金額的な影響が大きく、赤字の要因としてしばしば取り上げられますが、その内容のイメージはつきますか?
よく比較の対象になる「減価償却」と一緒に大まかな内容を把握しておきましょう。
※ここからは、あくまでもイメージしやすくなることを優先した内容です。正確な理解をしたい場合は入門書籍や専門家によるサイトなどで該当する部分を確認してください。
目次
“経費になる領収書”って、なぜ経費になるの?〜利益の計算構造〜
唐突ですが、話の前提として“経費になる領収書”について考えてみます。
なぜこれが会社の経費になるのかを考えると、その後のお話もイメージしやすくなります。
まず、会社の経営成績を表す書類は、大まかにこのような構造をしています。
収益の内容はいくつもありますが、代表的な「売上」を知っておいてもらえればOKです。
例えば、100円のモノが売れた場合に原価が80円であれば、100円から80円を引いた残りが利益の20円になります。
収益100円−費用80円=利益20円
では、この原価にはどのような意味があるのでしょうか?
そもそも、100円のモノを売るためには、80円で仕入れたり作ったりする必要があります。
ですから、この80円は収益をあげるために必要な費用。
会計の世界では、ある収益に対応する費用を同じ時期に持ってくることで利益を計算することが基本的な考え方です。
この考え方を当てはめれば、“経費になる領収書”の意味も見えてきます。
普段の仕事では「経費で落とせたor落とせなかった」くらいの認識かもしれませんが、実は色々な期待があってこそ。
「“経費になる領収書”は収益をあげるために必要だから認められた」という文章の意味、ここまでの説明を踏まえて考えてみてください。
※税法に細かい規定があります。現実には「政策的な決まりごと」もたくさんあるので注意が必要です。
イメージ重視! 減価償却費の会計的な考え方
ここまで、“経費になる領収書”の意味を収益と費用の関係から解説してきました。
次に、減損損失との比較において大切になる減価償却の説明をします。
先ほどの領収書もそうですが、多くの費用は同じ時期に収益をあげるための内容です。
ただ、一部の費用は今後何年もの間にわたって収益をあげるために必要になることも。
対象となる代表的な項目は次の通りです。
- 建物
- 機械設備・装置
- 車両
見ていただいて分かる通り、金額も先ほどの領収書レベルとは違いますね。
これらのモノは、1,000万円でも1億円でもすぐに費用とすることはせず、何年もの間にわたって費用になります。
これが減価償却です。
現実的な数値ではありませんが、機械設備を先ほどと同じ80円で導入した場合を例に説明しましょう。
条件は次の通りとします。
- 80円で機械設備を導入
- 4年間使うことができる
- 機械設備による生産活動によって、毎年50円の収益が期待される
大きな金額の買い物をした時に減価償却をしないとこうなってしまう
まず、減価償却をしない場合です。
1年目はこのように利益の計算をします。
収益50円−費用80円=利益−30円
収益が予定通り50円出ていますが対応する費用が機械設備の代金が全額80円となっており、差し引きマイナス30円の赤字になってしまいました。
次に2〜4年目。
収益50円−費用0円=利益50円
今度は黒字になりました。
ただ、収益の50円がが丸々利益になっています。
これが会社の“実態”をきちんと表しているかといえば、少し違うよなぁと考えるのが会計の世界では一般的です。
大きな金額の買い物をした時は減価償却をすると会社の“実態”が分かる
今度は減価償却を適用してみましょう。
これを4年にわたって減価償却すると80円÷4年で1年あたり20円。
すると…。
収益50円−費用20円=利益30円
毎年30円の利益が出ました。
今度は会社の“実態”を表している状態だと認められます。
減損損失が発生するのはこんな時
減価償却も、収益をあげるために必要な費用なのが分かりました。
しかし、何年もの間にわたって費用にする項目の場合、そうとも言い切れない事態が起こることも。
すなわち、当初の予定が狂い目指していた収益があげられないことがあります。
こうなると、もはや収益をあげるために必要な費用を何年にもわたって、という前提が崩壊してしまうのです。
会計の世界では「もう減価償却に見合う収益があげられないなら今すぐ損失にしなさい」と決められていて、“もうムリ”の程度に応じた金額で減損損失を計上することになります。
ここまで解説すると減損損失が出てきた時のインパクトが強くなる理由が見えてきます。
減価償却なら薄く長く何年にもわたって出てきた費用が、減損損失だとまとめて出てきてしまう。
さらに、すでに説明した通り対象となる項目は建物や機械設備・装置のようなそもそも高額な買い物なので、「黒字が赤字に転落」になるくらいのダメージを会社に与えることも多いんですね。
「何で黒字予定の会社が突然赤字になるんだよ?」
以前、黒字予定の航空会社が当初とは一転巨額の赤字になるニュースがありました。
そのニュースを見たわたしの父親が「何で黒字予定の会社が突然赤字になるんだよ?」とテレビに向かって文句を言っていたんです。
減損損失が巨額になることが多いのは分かったとして、今度はそんな疑問が出てくるのも自然な流れでしょう。
ニュースの中で「監査法人と協議中」などのフレーズが出てくるように、減損損失にするかしないかの微妙なラインがあります。
さらに、先ほどの「“もうムリ”の程度」についても未来の予測が入ってくるのは避けられないのも減損損失の特徴です。
そのため、はじめは予定していなかった減損損失が決算発表の土壇場で出てくることが可能性としてあるのです。