「残業しない新人」の姿勢を嘆く前に考えるべき本質論
いつの時代も若手社員とベテラン社員の考え方には大きな差があるものです。
近年は残業に対する考え方がクローズアップされる機会も増えてきました。
具体的には
- 残業をしない新人や若手社員
- それを苦々しく見ているベテラン社員
の構図です。
会社内での立場からすると、上司であるベテラン社員の声が強くなるでしょう。
しかし、本質的な考え方や社会からの要請の面で、それでいいのか、という問題があります。
そんな残業について考えていきます。
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目次
「残業しない新人」に対する上司の代表的な嘆き
まず、「残業しない新人」に対する上司の代表的な嘆きについて見ていきましょう。
「みんなが残っているのに、一人だけ帰るのか」
フロアにいる社員はみんな遅くまで残っています。
そんな中、新人が「お先に失礼しま〜す」と言いながら帰っていく。
これを見て「みんなが残っているのに、新人が一人だけ帰るのか」と嘆いている状態です。
「自分が新人時代は残業していたのに」
これは、今の状態がどうこうとは関係ない内容となります。
上司が若い頃、たとえ自分の仕事が終わっていたとしても、上司が帰るまで残っていた場合です。
かつての自分がスタンダードになっていると、新人が先に帰るのを苦々しく思うことがあります。
「自分が新人時代は残業していたのに」と、仕事に対する姿勢を疑問視するわけですね。
「まだやるべきことが残っているだろう」
仕事の終わりには2つの意味があります。
- 仕事の進捗による終わり
- 就業時間による終わり
の2つです。
残業しない新人を見ながら、「まだやるべきことが残っているだろう」と、時間が来たから帰ることに対して疑問を持つことがあります。
本当に「残業しない」が問題の本質なのかを問い直す
ここまで紹介した内容は、いずれも新人を見ながら「残業しない」ことに対して疑問を持っています。
しかし、本当に「残業しない」ことが問題の本質なのでしょうか。
視点を変えることで見えてくることがあるかもしれません。
「みんなが残っているのに、一人だけ帰るのか」
→残業していることを問題視する
果たして多くの人がやっていることが正しいことなのでしょうか。
もしかすると、「一人だけ」である残業していない人が正しいことであるとは言えませんか?
以下のことも念頭に、あるべき姿を模索していただきたいと思います。
- 本来、就業時間中に業務が終わることが健全ではないのか
- 人にはそれぞれの生活があり、就業時間外を拘束することに不合理はないのか
- みんなが残業しているのは単に同調圧力によるものではないのか
- 会社側からすれば人件費の面でも負担があり、「給料泥棒」になっていないか
「自分が新人時代は残業していたのに」
→それを今の新人に押しつけることに合理性があるのか
日本の社会において、「自分が受けた仕打ちを下の世代にも受け継がせたい」悪しき習慣は根深い問題として存在します。
例えば、学校の部活動における先輩後輩の文化はその代表的なものです。
一年生の時は、まるで人間ではないかのような仕打ちを受け、解決方法は上級生になることだけ。
その後、新一年生が入ってきたらまたその仕打ちを繰り返す意味のないサイクルです。
会社においても、とにかく「みんなが苦労する」ことに意義があるかのような文化にストップをかけることはできないものでしょうか。
「まだやるべきことが残っているだろう」
→就業時間中の問題・「相談できない孤独」はないのか
「まだやるべきことが残っているはずなのに」「時間になったから帰る、なんてけしからん」と、新人をジャッジしてはいませんでしょうか。
もし新人が就業時間中にほとんど質問をしてこない場合。
もしかすると
- どうしていいのか分からない
- 上司は怖くて質問ができない
- 職場にいるのが辛い
と感じているかもしれません。
その結果、就業時間中はじっと耐え早めに帰っていることがあります。
問題は「残業しない」ことではなく、就業時間が仕事をする時間になっていないことなのです。
このような新人を甘えと切り捨てず、進捗管理のフォローなど、目配りをするのも上司の役割といえるでしょう。
「常識」「悪習慣」を知らない新人から学ぶべきことはないか
基本的に新人はベテランより知らないことが多いでしょう。
ただ、「常識」「悪習慣」を知らないがためにできることがあります。
既に染み付いてしまったものをベテランも振り払うチャンスかもしれません。
家に居場所がないことを何とかしたほうがよい
残業を好んで行い、それが当たり前になっている人の中には「家に居場所がないから会社に残っている」場合があります。
いつの間にかそれが「早く帰るのはけしからん」にすり替わっているのであれば、問題は残っている側にあります。
時代によって変わる「正しいこと」
かつての“ニッポン企業”は長時間の拘束と引き換えに、社員の面倒を見る風土がありました。
そのような時代背景の中で
- 男性社員は会社に遅くまで残り仕事をする
- 妻である女性が家庭のことを引き受ける
ことが“普通”だった側面があります。
しかし、共働きが一般的になった現代においては、少々古いと言わざるをえません。
時代によって「正しいこと」も変わってくるのです。
あなたも新人も「あっちがおかしい」と思っている
上司が新人を「おかしい」「なってない」と感じている時、新人も上司を「おかしい」「なっていない」と感じています。
両者ともに本気でそう思っているわけです。
少なくとも、「人にはそれぞれの事情と考えがある」ことは知っておいていいでしょう。
「残業しない新人」の姿勢を嘆く上司・先輩が考えるべき本質論・まとめ
「残業しない新人」について考えてきました。
会社によって環境は様々ではあるものの、少なくとも「けしからん」の一言で片付ける時代は終わっています。
労働環境改善の面でも、上司が負っている責任は重いといえるでしょう。
それではまた別の記事でお会いしましょう。
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