富士通「461億円リストラ」を金額的・質的に分析する

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国家試験の勉強に挫折した“資格崩れ”から立ち直り、経理を筆頭に事務仕事を複数経験した男性。女性の多い職場で立ち回って(?)きました。仕事術・挫折からの復活・その他の分野について、複数のブログを運営中。

富士通の大規模リストラとして話題を呼んだ施策の続報がきました。

 

2019年2月19日付で公表された「臨時報告書」によると、「成長に向けたリソースシフト」の費用として2019年3月期に461億円を計上するとのこと。

今回は、その概要と金額的・質的な分析、及びその効果について考察していきます。

(※目次の項目をクリックすると、その箇所をすぐに読めます)

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富士通「461億円リストラ」の概要

2019年2月19日付で公表された「臨時報告書」において公表された内容は以下の通りです。

  1. 対象者:当社および当社の国内グループ会社の間接/支援部門に所属する45歳以上の正規従業員、定年後再雇用従業員で、2019年1月31日までに応募した者(2,850名)
  2. 退職日:原則として2019年3月31日
  3. 支援内容:退職金に特別加算を実施・再就職支援会社を通じた再就職支援サービスを提供
  4. 費用:461億円
  5. 計上時期:2019年3月期

インターネット上では「成長に向けたリソースシフト」について、その表現方法につっこむ様子が見て取ることができました。

まぁ物は言いようということで、ここではノータッチで進めていきます。

それにしても、「間接/支援部門に所属する45歳以上の正規従業員、定年後再雇用従業員」のくくりの中で2,850名もの方が応募するのは、一体社内の様子はどんなものか気になります。

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富士通「461億円リストラ」の金額的・質的分析

富士通「461億円リストラ」は、その金額的なインパクトがセンセーショナルに報道されました。

ただ、ありがちなのがその割合や影響についての考察なく「富士通がヤバイ」「富士通はオワコン」といった感想を持ってしまうことです。

ここでは、金額的・質的な分析を踏まえてリストラ案の意味を考えていきましょう。

以下、費用計上額との整合性の観点から「億円」表記を原則とします。各種計算過程における端数部分が気になる場合、百万円表記の「有価証券報告書」をご覧ください。

富士通「461億円リストラ」の金額的分析

まずは金額的分析からいきましょう。

多額すぎてイメージとして把握しにくい「461億円」という金額は、富士通にとってどのくらいの規模感なのでしょうか。

直近の「有価証券報告書」において判明している過去5年分の「営業利益」から、その割合を計算してみます。

  • 2013年度:1,472億円
  • 2014年度:1,786億円
  • 2015年度:1,206億円
  • 2016年度:1,174億円
  • 2017年度:1,824億円
  • 過去5年平均:7,464億円/5年=1,492億円
費用計上額の462億円を、この1,492億円で割ると約30パーセントになります。

富士通という巨大企業が一年間活動して得られる営業利益の3割に達する費用を計上するのですから、かなりの金額であることが分かります。

 

一時的な利益を犠牲にしてでも長期的にはプラスと判断しての取り組みをしているのでしょう。

 

次に、一人当たりの金額を計算します。

 

461億円を2,850人で割ると、一人当たり約1,617万円となります。

 

この1,617万円を有価証券報告書より富士通社員の平均年間給与790万円で割ると、「約2年」と計算ができます。

一人当たりの金額で「高額」と感じる内容でも、「2年で回収ができる」と考えれば、富士通サイドからすると勝算のある内容ともいえます。

富士通「461億円リストラ」の質的分析

「当該事象の連結損益に与える影響額」という項目で、印象的な一文があります。

上記キャリア転進支援の実施に伴う費用461億円を営業費用として、2019年3月期決算において計上予定です。

文章の中にある、「営業費用として」が目につきます。

「早期退職制度」とそれに伴う割増退職金の支払い自体は特に珍しいことではありません。

ただ、多くの場合において割増退職金については「特別損失」項目として計上されます。

しかし、今回は営業費用として計上するとのこと。

一瞬、「(特別の内容ではなく)経常的に行われることなの? 」と感じてしまいそうになりますが、そうではありません。

 

その意味は、富士通が国際会計基準(IFRS)を採用していることです。

 

IFRS基準による損益計算書では、日本基準で見られる特別損益項目が内訳として判明しません。

ですから、「2019年3月期の決算における注記事項まで含めて内容を把握する必要があります」が質的な重要性についてお伝えできるすべてです。

今回の策である程度落ち着くかもしれませんし、逆に“第2弾”を数年後に行うのかもしれません。

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富士通「461億円リストラ」の効果

リストラに限らずではありますが、何事にも正負の側面があります。

世間的にも注目度の高い今回のリストラ、効果はいかほどのものでしょうか。

富士通「461億円リストラ」の効果を肯定的に

富士通という大企業において一度腰を落ち着けると、なかなか辞めることも辞めさせることも難しくなります。

しかも、間接部門の人員は人数ベースで見て圧倒的な余剰です。

1000人規模での人員削減を行なっても日常業務に影響が出なければ、費用削減の観点からリストラは成功といえます。

富士通「461億円リストラ」の効果を否定的に

一方で、この手の早期退職制度における“あるある”の懸念も。

すなわち

  • 辞めてほしくない優秀な人ほど応募
  • 辞めてほしい“お荷物社員”ほど、会社にしがみつく

というストーリーです。

 

そうなってしまえば、残ったわずかな割合の優秀な社員にのしかかる負担が大きくなり、負のループに陥る恐れがあるでしょう。

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富士通「461億円リストラ」を金額的・質的に分析する・まとめ

ここまで、富士通の間接部門における大規模なリストラについて考察してきました。

有価証券報告書が2019年の6月に公表されますので、その際も新情報が出てくるはずです。

引き続き、注視していきます。

それではまた別の記事でお会いしましょう。

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