【実効性なし? 】内部通報者の保護制度がもたらす意味を考える
きわどいことをしている会社に勤めている人にとって、今後を注視していきたい報道があったのでご紹介です。
政府は、不正を告発した内部通報者を報復的に解雇したり異動させたりした企業に、行政措置や刑事罰を科す検討に入りました。
現在の制度は、企業が通報者に不利益を与える行為を禁じていますが、民事裁判で解決するしかなく実効性に乏しいといえます。
通報しやすい制度を整えることで、企業のリスク管理能力を向上させ不正を抑止することを期待しているとのこと。
さらに、消費者が企業の品質不正などで被害を受けないようにする狙いもあるようです。
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企業における不正の種類と影響
企業の不正は、大きく分けて経営者によるものと従業員によるものがあります。
このうち、従業員による不正は多くの場合影響力のないもの。
逆に経営者による不正は、安全関する内容など消費者に深刻な影響を与える可能性が高く、社会へのインパクトが大きくなります。
さらに、企業全体におけるコンプライアンスに対する姿勢の大部分は経営者の姿勢に依存します。
小・中学生時代の“チクる”という言葉で考えてみましょう。
この頃、悪事をバラされることをイヤがる人間は、これを教師に通報しようとする人に対して「“チクる”のかよ」と、自らの悪事を正当化し真っ当に生きる人を非難しました。
企業の不正について内部通報者を不当に扱うことは、いわばクラスに影響力がある教師自ら「なんで“チクる”んだよ」と言っているようなのです。
いとも簡単に握りつぶし、報復までできてしまうのが理解してもらえるでしょう。
いわゆる「内部統制」を無効化できる権限を経営者は有しているので、その倫理観が誰よりも重要なのですね。
公益通報者保護法の制度と概要
現実問題として、しばしば社会を賑わす企業の不正は多くの場合が内部告発によって明るみになっています。
このあたり誤解があるようなので書いておきますが、いわゆる監査法人による監査は企業の不正を暴くことが目的ではなく、限界があります。
ですから、せっかく勇気と正義感をもって告発してくれた人を保護しなければいけません。
この点、2006年4月に施行された公益通報者保護法が存在し、通報者を守ろうとしています。
ただ、冒頭にも書いているように実効性に乏しく、通報者本人の頑張りに頼っているのが現実といえます。
内部通報者保護制度に期待するのは罰則の強化のみ
罰則の強化で実効性が伴うようになった象徴的な事例は、飲酒運転に対する罰則の強化です。
かつて、飲酒運転に対する罰則は事故の重大性と比べ微々たるものでした。
それが、社会的な要請もあり厳罰化が進んだ結果、統計的にも飲酒運転が減ったわけです。
街に代行運転の車を見かけるようになった時期とも重なりますね。
いかに、それまでの制度が意味のないものだったか実感する出来事でした。
内部通報者保護制度についても、やはり報復人事に対する罰則が実効的なものでないと、相変わらず意味のないものになるのは目に見えています。
法律として、どこまで踏み込めるのか?
この点を注視して今後の進展を見守っていきたいです。
それではまた別の記事でお会いしましょう。
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