人手不足倒産は労働者軽視のツケを企業が払っている“自己責任”問題だ【自業自得】
かねてから叫ばれていた「人口減少社会」「少子高齢化問題」が、いよいよ現実として労働力の減少として可視化されてきました。
それに伴い、かつては聞くことのなかった概念である「人手不足倒産」がニュースの見出しとなる時代になったわけです。
その代表的な調査として帝国データバンクによる“「人手不足倒産」の動向調査”があります。
今回は、当該調査を題材に人手不足と倒産について考えてみましょう。
(※目次の項目をクリックすると、その箇所をすぐに読めます)
目次
帝国データバンクによる“「人手不足倒産」の動向調査(2018年上半期)”の要点
まずは、当該資料から要点となる部分を見てみましょう。
- 2018年上半期(1〜6月)の「人手不足倒産」は70件発生(通年換算で、過去最多ペース)
- 業種別件数では「サービス業」が最多
当該資料における「人手不足倒産」の定義は
従業員の離職や採用難等により収益が悪化したことなどを要因とする倒産
となっています。
すなわち、決して仕事がないわけではなく、取引先からの注文や来客はあるが
- 人手不足により仕事を受けることができない
- 人手不足により店舗運営(シフト)が回らない
といった点で、今までの“倒産”からイメージされる内容とは異なるわけです。
これは、どのような背景によるものなのでしょうか。
その前に、人手不足倒産などありえなかった時代の就職状況はこのようなものでした。
かつて「就職氷河期」という“買い手市場”の時代があった
これから就職活動(就活)に臨む学生さんには想像ができない世界でしょうが、かつて「就職氷河期」なる時代がありました。
新卒学生の就職が一部の“高スペック”の人に偏り、多くの人が意図しない「フリーター」や「非正規社員」の身分を強いられる状況です。
本人の努力と運により正社員として採用された人も、「お前の代わりはいくらでもいる」状況から、低賃金・長時間労働の環境で搾取されてきた悲しい歴史もあります。
それがどのくらい過酷だったかといえば、「第三次ベビーブーム」がまったくなかったことからも明白といえるでしょう。
参考資料の紹介をしたツイートを貼っておきます。
現役世代を救わなかったのでロスジェネは次世代の子供を作れませんでした
(´ω`)
>RT pic.twitter.com/k8PeodkK9C
— リフレねこ (@hayashi_r) September 14, 2018
立場が逆転し人手不足倒産が現実のものとなった(売り手市場)
そんな就職氷河期の時代が終わり、超がつく「売り手市場」の時代になりました。
企業サイドとしては
- 何としても目標の採用人数を確保したい状況
- SNSの発達で失礼な面接をする企業はあっという間に拡散される時代
ということもあり、傍若無人な選考は下火になっていくでしょう。
昔を知る人からすると色々と言いたいところかもしれません。
とはいえ、肌感覚としては「ようやく正常化に向けて時代が動き出しだ」の表現がしっくりきます。
強引ともいえる内定者の囲い込みのような歪んだ側面こそあれ、きちんと就活をすればおおむね内定を取ることができる環境になりました。
その結果、地方を中心に人手不足はいよいよ深刻化してきたことの象徴的なニュースとして『悲鳴に近い人手不足』なる見出しも紙面を賑わせる時代が到来。
街を歩いていると、店頭に「アルバイト急募」のチラシが一年中貼ってある飲食店も多いですね。
労働力不足は各種の“資源枯渇問題”に似た構造を持っている
連日のように見ることができるこの手のニュースを見ながら、気づいたことがあります。
「企業(経営者)が言う“人手不足”は、各種の“資源枯渇問題”と同じなんじゃないか? 」
その理由と対応策はどのようなものでしょうか。
労働力不足が“資源枯渇問題”である理由
例えば、あなたの好きな「近い将来食べることができなくなると心配されている水産資源」をイメージしてみると分かりやすいでしょう。
現状、不足していることの原因と対策として
- 目先の必要量を確保するために“次世代”のことは考えずに乱獲した(おいしいところを欲しがった)
- 世界各国でも需要が伸びてきた(競合が多い)
- 不足しているのなら、輸入に頼って何とかしよう(育てるのは時間がかかる)
となっているのは、まさに企業を取り巻く環境そのものだといえるのです。
専門家が提唱する労働力不足への対応策
各業界の人手不足に関して、専門家の意見としてはおおむね次の3パターンが提唱されています。
- シニア世代・女性の活用
- AI化・ロボット化による人からの代替化
- 外国人労働者(移民)の受け入れ
これらのすべてを見ることができるのは、主に都市部のコンビニエンスストアですね。
ご年配の店員さんについて、かつては時々見かける程度だったわけですが、今では当たり前のように店頭に立たれています。
まだまだ一部の店舗ではありますが、「セルフレジ」も見かけるようになってきました。
一番「時代が変わったなぁ」と思わされるのが外国人の店員さんの激増。
彼らがいなければ回らないだろうと思われる店舗も珍しくなくなりました。
今後は、もっと多くの業界でこの流れが起こるでしょう。人手不足に泣く企業は労働者を軽視してきたツケを払っているにすぎない
このように、買い手市場から売り手市場への変化に伴い、企業(経営者)サイドが泣くシーンを見る機会も増えるでしょう。
しかし、この状況を見る労働者、とりわけ“就職氷河期世代”の人の目は冷めています。
すでに紹介した『悲鳴に近い人手不足』の記事について順を追って経営者たちの無策っぷりを批判した次のツイートは、1万を超えるリツイートと「いいね」で共感を呼んだいることからもそれがよく分かります。
①若者を低賃金で使い倒し
②家庭を持てない状況に追い込み
③少子化を推進
④人手不足を引き起こした原因が
⑤人がいないと国に泣きつき
⑥残業規制されたら成り立たぬと
⑦人が来ない理由を自ら告白
…今の人手不足は、この手の無能な経営者保護で若者を切り捨てた結果。https://t.co/FYPbAsHjmw— どーも僕です。(どもぼく) (@domoboku) July 22, 2018
人手不足倒産は労働者軽視のツケを企業が払っている“自己責任”問題だ・まとめ
労働力の問題と人手不足倒産について考察してきました。
「経営者vs労働者」や「世代間対立」の問題もからみ、複雑かつ感情的にもなってしまう話題です。
とはいえ、今は現状を見据えながら、それぞれの立場でできることをやっていくだけ。
今後も継続して話題になる論点でしょうから、そのつど世の中の動きを注視していくつもりです。
それではまた別の記事でお会いしましょう。
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